会長ごあいさつ

日本CRO協会 会長
藤枝 徹

 
当協会は、1994年の設立以来、臨床試験(治験)に係るさまざまな業務を支援する企業からなる団体として、会員相互の連携のもとに、CROの適正な確立、定着、発展に努め、今年、創立30周年を迎えることができました。現在、協会会員数は49社(正会員13社、賛助会員36社)、2023年の年間売上高は約2,500億円、従業員数は約20,000人となりました。

設立後の最初の10年はCROの存在価値を示す認知度向上、次の10年は人材育成等を主とした品質向上、そして、その後の10年で、医薬品のみならず、医療機器、再生医療等製品、また製造販売後、臨床研究などの業務や、それに伴うIT関連業務等、業務の幅も広がり、医薬品、医療機器等の開発や育薬等のプロセスにおいて、なくてはならない存在になるまでに成長してまいりました。これも、ひとえに皆さま方のご支援、ご鞭撻の賜物であり、こころより感謝しております。

近年は、デジタル化、患者さんの臨床試験への関与、Real World Dataの利用など臨床試験の環境は大きく変化し、CROは旧来の業務単独では成り立たなくなり、業務範囲の拡大とともに、様々なステークホルダーとの協業が求められています。特に、Technologyとの結びつきが必須となり、現在、当協会には、賛助会員として、システムベンダー、データベースなどの企業にも参加頂いています。当協会は、今後も臨床試験などのプロセスを担う企業などの仲介役として、業務の効率化や品質向上に対するさまざまな提案を、製薬企業、医療機器企業、医療機関や行政等に行い、さらなる医薬品・医療機器開発・市販後等の各種業務の推進に貢献してまいります。

一方、最近、日本のドラッグラグ、ドラッグロスが社会問題となっています。原因はいろいろありますが、その一つに、日本での臨床試験(治験)の問題があげられております。日本での治験は品質が高いことはこれまでも定評がありましたが、その反面、煩雑な手続き、低い症例集積性、費用の不透明感、デジタル化の遅れ等が指摘され、新薬のグローバル開発が当たり前となった昨今において、日本が新薬開発の「場」としての魅力を失っていることが指摘されています。治験関連業務のKey Playerの一員として、CRO協会はこの課題に積極的に取り組み、再び、日本が新薬開発国として世界をリードする立場になることに貢献できるように努めていきたいと考えております。

また、CROは業務委託を受けているとはいえ、第三者的に仕事に取り組むことができる立場にあります。CRO各社が高い倫理観を持ち、コンプライアンスを遵守することは極めて重要であり、受託業務の信頼性ならびに取得データの信頼性の確保を最優先に位置づけ、種々の業務に取り組んでまいります。

今後とも、日本の臨床試験を活性化し、より良い医薬品、医療機器、再生医療等製品などをより早く患者さんの手元に届くよう、また、日本のヘルスケア関連業界のさらなる発展のために、会員一同、努力して参りますので、皆さまのご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

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