検定試験の総括と全体講評

第8回 Advancedコース治験実務英語検定の総括と講評

全体総評

Advanced コースはリスニング、読解、英訳の3技能を対象にした検定試験です。Basicコースに比べ難しい試験ですが、取り組み方次第で合格に近づくことができます。合格された方々の傾向を見てみますと、リスニング、読解、英訳のそれぞれで一定以上の点数を獲得されていました。検定に合格するには、バランスよく3技能を習得しておく必要があります。
また、課題数が多いため、答案作成時には時間配分に注意し、すべての課題に解答できるよう、スピーディに進めていく必要があります。最後に出題される長文英訳では試験時間内に一部の課題しか解答に着手できていない方や未着手の方がいらっしゃったため、得点率が他の課題と比べて低くなっていました。長文英訳まで一通り対応できる英語力を身に着けた受験者が合格している傾向が強く見受けられました。時間内に多くの課題に取り組むためには、業務で頻出する表現は辞書や参考書を見ずに英文を書けるようにしておく必要があります。

リスニングでは優秀な成績を修めた方が多くいらっしゃいましたが、英文読解と和文英訳課題では点数が伸び悩んだ方が散見されました。特に和文英訳課題は設問数も多く、配点が高いため、英文を書く技能(ライティング力)をしっかりと習得できていないと合格するのは難しいでしょう。
今回の英訳課題では、頻出表現の用法、正しい前置詞の選択、自動詞と他動詞の意識等の事項において誤りが散見されました。ひとつひとつは小さな誤りでも、積み重なると読み手が情報を読み取れない可能性があります。また、文を読むリズムが悪くなり、読みにくい文章となります。
語学習得は日々の積み重ねが重要になります。英文を発想する力を養い、また、学習したことを業務などで繰り返し使用することで身につけることができます。業務であまり使うことがない方々は、英訳を添削してくれる講座や英語を話す講座を受講する、同僚や友人と英語でコミュニケーションを取る場を設けるなど、英語に触れる機会を少しでも多くつくるようにしましょう。

リスニング(出題数:15、得点率:85.2%)

リスニング問題では、治験薬の服用方法の説明や施設訪問の日程調整、会議開始前のシステム調整の会話などを聞き取り、与えられた設問に解答する問題を出題しました。
状況をきちんと聞き取り、適切に解答できている方が多くいらっしゃいました。
ただし、聞き取る内容が複雑な課題の正答率は低くなっていました。ある程度長さのある音声で複雑な内容の説明に慣れておく必要があります。

出題例:
次のような英文を音声で聞き、設問に答えていただきます。

CRC:
Could you explain again how to take the study drug?
CRA:
Take two capsules of the study drug once daily in the morning, preferably at around the same time. The study drug may be taken with or without food. Do not throw away empty sheets after taking the drug.

読解(出題数:2、得点率:75.9%)

読解では、英文を和訳する課題と選択肢から正解を選ぶ課題の2パターンを出題しました。
英文を和訳する課題では原文の情報が抜けていたり、文法理解が不十分なために係り受けを誤ったりしていると思われる答案がありました。英文で書かれた情報を抜け漏れなく日本語で表現できるようにしましょう。
選択肢から正解を選ぶ課題では、英語の長文を限られた時間内に正確に理解し、設問に答える必要があります。日頃から英文に慣れ、読解の速度を上げるなどして、読解への対応力を高めておきましょう。

出題例:

  • 試験デザインに関する記載の英文和訳

短文英訳(出題数:15、得点率:73.6%)

1文もしくは2文程度の日本語を英訳する課題を出題しました。限られた時間内できちんと英訳できるかを問う課題でした。
日本語で書かれた状況を読み手に誤解を与えない範囲で英文を書けている方がある程度いらっしゃいました。一方で、日本語文の情報が抜けていたり、誤った語法で書いていたりする方もいらっしゃいました。業務で頻出する表現を中心に出題しましたので、よく用いる表現は復習して身につけておきましょう。時間内で課題を終わらせるには、それぞれの場面で用いる適切な動詞やその動詞が取りえる構文(自動詞/他動詞用法、that節を取れるか、コロケーションなど)をしっかり習得しておくことが必要になります。

出題例:
次のような課題文を英訳していただきます。

被験者は初回投与のために来院したが、過去に肝炎に罹患していた事が発覚した。除外基準に抵触するため脱落となった。

長文英訳(出題数:3、得点率:33.0%)

1つの場面を説明する日本語を英訳する課題を出題しました。ある程度の長さがある文章をきちんと構成し、英文で表現できるかを問う課題でした。
すべての課題に取り組めた方は少数でした。取り組まれた方の多くは全体の構成を把握し、前後関係も意識して英訳できていました。細かい点でミスは見受けられましたが、情報の伝達は十分に行えていました。
短文とは異なり、長文では1文ごとの正確さに加え、前後関係を考えて英訳する必要があります。論理展開がしっかりとできているか考えながら英訳できるようにしましょう。

出題例:
次のような課題文を英訳していただきます。

被験者は2021年9月2日に抗悪性腫瘍薬の本治験に登録され、2021年9月7日に治験薬の腹部皮下投与を開始した。
2021年10月24日、被験者は腹部の治験薬注入部位に炎症を発現したため、2種類の経口の抗生物質が処方された。

英訳問題での特徴的な誤りをいくつか紹介します。
  • [(症状を)訴える] この意味では[complain of]と表現します。[of]を忘れないように注意しましょう。
  • [(病気/症状が)消失する] この意味では[disappear]を用いることができます。ただし、[disappear]は自動詞のため、受動態にはできません。[Pneumonitis was disappeared]のような使い方は誤りです。
  • [入院] 「入院する」という動作は[be admitted to the hospital]、「入院している」という状態は[be hospitalized]と使い分けることが多いです。

第7回 Basicコース治験実務英語検定の総括と講評

全体総評

本Basicコースはライティングおよび読解の2技能を対象にした検定試験です。治験実務で用いられる英語の基礎をきちんと理解しているかを問う試験となっています。設問はすべて選択式で出題します。
合格者された方々の傾向を見てみますと、ライティング技能を測る単語補充、並べ替え、文章補充、および読解のそれぞれで7割以上を正解されていました。Basicコースの試験に合格するには、英語の基礎をしっかりと習得し、治験分野の英語に慣れておく必要があります。
本検定はCRAやCRCの方々が業務で扱う様々な場面での英語の使用を想定し出題しています。一部課題はCRAもしくはCRCいずれかの業務で扱う場面から出題しています(例:CRA向け:モニタリング報告書/CRC向け:EDCのクエリ対応)。
1時間という限られた時間内で様々な課題に取り組む必要があるため、設問を的確かつ迅速に読み解き正解を導く必要があります。文法事項などを調べる時間はあまりありません。基本的な英文法や英語構文などはきちんと習得をしておく必要があります。例えば、今回の単語補充課題では、品詞(形容詞と副詞、接続詞と前置詞など)や態(能動態と受動態)を問う設問がいくつかありましたが、不正解の方が見受けられました。業務でよく用いる単語の意味や役割(品詞)などをしっかりと覚えておく必要があります。
語学習得は日々学習を継続することが大切です。治験分野以外でも、ご自身が興味のあるテーマや趣味などで、英文で書かれているウェブサイトや雑誌に挑戦してみてはいかがでしょうか。

単語補充(出題数:15、得点率:75.6%)

選択肢から1語の英単語を括弧に補い、文を完成させる課題を出題しました。
選択肢には、動詞や名詞、形容詞、前置詞などがあります。動詞では、能動態か受動態かを見分けたり、前置詞とのコロケーションや動詞の活用を判断したりする必要があります。また、英文ライティングで頻出する基本的なイディオムを問うような課題も出題いたしました。和文と英文の関係などから括弧に当てはまる選択肢を導く必要がありました。

出題例:
空欄に入る適切な語句を選んでください。

被験者Xは発熱と右季肋部痛を訴え2022年4月20日に緊急入院した。
Subject X (              ) pyrexia and pain in the right upper quadrant, and was urgently admitted to our hospital on April 20, 2022.

[選択肢]

  1. complained
  2. complained of
  3. complaint

並べ替え(出題数:7、得点率:73.9%)

日本語課題文1文程度に対し、英単語の選択肢を並べ替えて英訳する課題を出題しました。英文を構成する力が試される課題で、英語の基本5文型をしっかりと理解できていれば正解を導くことができる設問です。
接続詞を用いて複文(主節と従属節)を組みたてる設問や前置詞句を用いた設問等が出題されました。構成が複雑になると前後関係や文全体をきちんと把握していないと正解を導くことが難しくなります。様々な構文に慣れ、文章全体の構成に注意してライティング技能を向上させましょう。

出題例:英文を完成させるために選択肢を並べ、3番目に来る番号を答えてください。

管理庫の温度記録によると2022年1月30日以降、温度が1℃下降している。
According to the record of temperature in the investigational drug storage room, (              ) January 30, 2022.

[選択肢]

  1. 1°C
  2. since
  3. has dropped
  4. by
  5. the temperature

文章補充(出題数:8、得点率:85.2%)

日本語課題文1文程度に対し、内容を過不足なく説明している英文を選択する課題を出題しました。単語の意味や動詞、接続詞の用法などを問う設問ですので、総合的に英語を理解しておく必要があります。適切な動詞を英文全体から判断する設問等が出題されました。各選択肢中の動詞の意味やコロケーションなどをきちんと理解し、適切な意味の英文を選ぶ必要がありました。限られた時間内で英文を読解できるよう英文読解に慣れておきましょう。
また、英文の組み立ての正しさを問う設問などもありますので、ライティング能力も必須となります。

出題例:
日本文の内容を過不足なく英文で表現するため、空欄に入る適切な英語を選んでください。(被験者は男性としてください)

被験者はCovid-19濃厚接触者と診断されたため、Visit5に来院できなかった。
The subject could not visit the hospital at Visit 5,
(              ).

[選択肢]

  1. because he considered a Covid-19 infection
  2. because he was identified as a close contact of a Covid-19 case
  3. because of he became a close contact of a Covid-19 case

読解(出題数:10、得点率:83.1%)

いくつかの英文センテンスで構成された課題文を読解し、内容を理解しているか選択肢から正解を選ぶ課題を出題しました。
限られた時間内で課題に取り組む必要があり、英文で書かれた内容を短時間で読み解く必要があります。課題文はそれほど難しい内容ではありませんので、治験分野の英文読解に慣れていれば正解を導くことができる設問です。

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