検定試験の総括と全体講評

第9回 Advancedコース治験実務英語検定の総括と講評

全体総評

Advanced コースはリスニング、読解、英訳の3技能を対象にした検定試験です。Basicコースに比べ難しい試験ですが、取り組み方次第で合格に近づくことができます。合格された方々の傾向を見てみますと、リスニング、読解、英訳のそれぞれで一定以上の点数を獲得されていました。検定に合格するには、バランスよく3技能を習得しておく必要があります。
また、課題数が多いため、答案作成時には時間配分に注意し、すべての課題に解答できるよう、スピーディに進めていく必要があります。最後に出題される長文英訳では試験時間内に一部の課題しか解答に着手できていない方や未着手の方がいらっしゃったため、得点率が他の課題と比べて低くなっていました。長文英訳まで一通り対応できる英語力を身につけた受験者が合格している傾向が強く見受けられました。時間内に多くの課題に取り組むためには、業務で頻出する表現は辞書や参考書を見ずに英文を書けるようにしておく必要があります。

今回のリスニング課題では優秀な成績を修めた方が多くいらっしゃいましたが、和文英訳課題では点数が伸び悩んだ方が散見されました。和文英訳課題は設問数も多く、配点が高いため、英文を書く技能(ライティング力)をしっかりと習得できていないと合格するのは難しいでしょう。
今回の英訳課題では、頻出表現の用法、正しい前置詞の選択等の事項において誤りが散見されました。
ひとつひとつは小さな誤りでも、積み重なると読み手が情報を読み取れない可能性があります。また、文を読むリズムが悪くなり、読みにくい文章となります。
語学習得は日々の積み重ねが重要になります。英文を発想する力を養い、また、学習したことを業務などで繰り返し使用することで身につけることができます。業務であまり使うことがない方々は、英訳を添削してくれる講座や英語を話す講座を受講する、同僚や友人と英語でコミュニケーションを取る場を設けるなど、英語に触れる機会を少しでも多くつくるようにしましょう。

リスニング(出題数:15、得点率:93.5%)

リスニング問題では、治験薬の服用方法の説明や施設訪問の日程調整、会議開始前のシステム調整の会話などを聞き取り、与えられた設問に解答する問題を出題しました。
状況をきちんと聞き取り、適切に解答できている方が多くいらっしゃいました。

出題例

次のような英文を音声で聞き、設問に答えていただきます。
CRC:Would you please explain how to take the study drug?
CRA:Sure. Subjects should take the study drug orally once daily before breakfast. The study drug will be administered using indistinguishable capsules. The dosing period is 12 weeks.

読解(出題数:2、得点率:67.3%)

読解では、英文を和訳する課題と選択肢から正解を選ぶ課題の2パターンを出題しました。
英文を和訳する課題では原文の情報が抜けていたり、文法理解が不十分なために係り受けを誤ったりしていると思われる答案がありました。英文で書かれた情報を抜け漏れなく日本語で表現できるようにしましょう。
選択肢から正解を選ぶ課題では、英語の長文を限られた時間内に正確に理解し、設問に答える必要があります。日頃から英文に慣れ、読解の速度を上げるなどして、読解への対応力を高めておきましょう。

出題例

試験デザインに関する記載の英文和訳

短文英訳(出題数:15、得点率:71.9%)

1文もしくは2文程度の日本語を英訳する課題を出題しました。限られた時間内できちんと英訳できるかを問う課題でした。
日本語で書かれた状況を読み手に誤解を与えない範囲で英文を書けている方がある程度いらっしゃいました。
一方で、日本語文の情報が抜けていたり、誤った語法で書いていたりする方もいらっしゃいました。業務で頻出する表現を中心に出題しましたので、よく用いる表現は復習して身につけておきましょう。時間内で課題を終わらせるには、それぞれの場面で用いる適切な動詞やその動詞が取りえる構文(自動詞/他動詞用法、that節を取れるか、コロケーションなど)をしっかり習得しておくことが必要になります。

出題例

次のような課題文を英訳していただきます。
3月2日11時に被験者より、当日の朝に服用する治験薬を飲み忘れたと電話がありました。すぐに朝分を服用し、夕食後にも治験薬を服用するように被験者に伝えました。

長文英訳(出題数:3、得点率:43.7%)

1つの場面を説明する日本語を英訳する課題を出題しました。
ある程度の長さがある文章をきちんと構成し、英文で表現できるかを問う課題でした。
約半数の方は最後の課題まで取り組めていませんでした。最後まで取り組まれた方の多くは全体の構成を把握し、前後関係も意識して英訳できていました。細かい点でミスは見受けられましたが、情報の伝達は十分に行えていました。
短文とは異なり、長文では1文ごとの正確さに加え、前後関係を考えて英訳する必要があります。論理展開がしっかりとできているか考えながら英訳できるようにしましょう。

出題例

次のような課題文を英訳していただきます。
2023年2月8日に被験者が自宅で昼食を摂ろうとしたときに腹痛、嘔吐、浮動性めまいが発現し、同日に被験者は入院した。CT検査により中等度の小腸閉塞と診断された。静脈内輸液による治療を受け、経鼻胃管を挿入し経口摂取が制限された。治験薬の投与は中断された。…

英訳問題での特徴的な誤りをいくつか紹介します。

  • [due to] due toの後は節をとることができません。名詞(句)を置きましょう。
  • [diagnose] 「(医師が)病気や症状を診断する」という意味で、症状を主語にする場合は、[症状+be diagnosed as +疾患名(by 医師/on 検査)]と表現することができます。
  • [recover] 「疾病、怪我などから人間・動物が回復する」という意味で用いる場合、自動してとして扱い「患者+recover from+疾病・怪我」のように表現します。

第8回 Basicコース治験実務英語検定の総括と講評

全体総評

本Basicコースはライティングおよび読解の2技能を対象にした検定試験です。
治験実務で用いられる英語の基礎をきちんと理解しているかを問う試験となっています。設問はすべて選択式で出題します。
合格者された方々の傾向を見てみますと、ライティング技能を測る単語補充、並べ替え、文章補充、および読解のそれぞれで7割以上を正解されていました。Basicコースの試験に合格するには、英語の基礎をしっかりと習得し、治験分野の英語に慣れておく必要があります。
本検定はCRAやCRCの方々が業務で扱う様々な場面での英語の使用を想定し出題しています。
一部課題はCRAもしくはCRCいずれかの業務で扱う場面から出題しています(例:CRA向け:モニタリング報告書/CRC向け:EDCのクエリ対応)。
1時間という限られた時間内で様々な課題に取り組む必要があるため、設問を的確かつ迅速に読み解き正解を導く必要があります。
文法事項などを調べる時間はあまりありません。基本的な英文法や英語構文などはきちんと習得をしておく必要があります。例えば、今回の単語補充課題では、品詞(形容詞と副詞、接続詞と前置詞など)や態(能動態と受動態)を問う設問がいくつかありましたが、不正解の方が見受けられました。業務でよく用いる単語の意味や役割(品詞)などをしっかりと覚えておく必要があります。
語学習得は日々学習を継続することが大切です。
治験分野以外でも、ご自身が興味のあるテーマや趣味などで、英文で書かれているウェブサイトや雑誌に挑戦してみてはいかがでしょうか。

単語補充(出題数:15、得点率:91.5%)

選択肢から1語の英単語を括弧に補い、文を完成させる課題を出題しました。
選択肢には、動詞や名詞、形容詞、前置詞などがあります。動詞では、能動態か受動態かを見分けたり、動詞の活用を判断したりする必要があります。また、治験英語で頻出する基本的なイディオムを問うような課題も出題いたしました。和文と英文の関係などから括弧に当てはまる選択肢を導く必要がありました。

出題例

空欄に入る適切な語句を選んでください。
追跡調査時の検査でも、本被験者は引き続き血小板数減少を発現していた。AE「血小板数減少」は持続していると判断された。
A follow-up examination showed that the subject continued to experience “platelet count decreased”. The AE “platelet count decreased” was (     ) to be persistent.

  1. described
  2. designed
  3. determined

並べ替え(出題数:7、得点率:71.2%)

日本語課題文1文程度に対し、英単語の選択肢を並べ替えて英訳する課題を出題しました。
英文を構成する力が試される課題で、英語の基本5文型をしっかりと理解できていれば正解を導くことができる設問です。
接続詞を用いて複文(主節と従属節)を組みたてる設問や疑問詞を用いた設問等が出題されました。構成が複雑になると前後関係や文全体をきちんと把握していないと正解を導くことが難しくなります。様々な構文に慣れ、文章全体の構成に注意してライティング技能を向上させましょう。

出題例

英文を完成させるために選択肢を並べ、5番目に来る番号を答えてください。
HCV抗体検査の結果が陰性であったため,C型肝炎ウイルスに感染している可能性は低いと判断した。
(     ), it was concluded that the probability of hepatitis C virus infection was low.

  1. the results of
  2. because
  3. antibody test
  4. were negative
  5. the HCV

文章補充(出題数:8、得点率:83.1%)

日本語課題文1文程度に対し、内容を過不足なく説明している英文を選択する課題を出題しました。
単語の意味や動詞、接続詞の用法などを問う設問ですので、総合的に英語を理解しておく必要があります。適切な動詞を英文全体から判断する設問等が出題されました。各選択肢中の動詞の意味やコロケーションなどをきちんと理解し、適切な意味の英文を選ぶ必要がありました。限られた時間内で英文を読解できるよう英文読解に慣れておきましょう。
また、英文の組み立ての正しさを問う設問などもありますので、ライティング能力も必須となります。

出題例

日本文の内容を過不足なく英文で表現するため、空欄に入る適切な英語を選んでください。
治験責任医師は、本有害事象が治験の治療終了から30日後に発現していることから、治験薬とは関連がないと判断した。
(     ), the principal investigator considered the event unrelated to the study drug.

  1. As the adverse event occurred 30 days after the completion of the trial treatment
  2. As the adverse event was occurred 30 days after the completion of the study treatment
  3. As the adverse event developed 30 days prior to the completion of the study treatment

読解(出題数:10、得点率:89.3%)

いくつかの英文センテンスで構成された課題文を読解し、内容を理解しているか選択肢から正解を選ぶ課題を出題しました。
限られた時間内で課題に取り組む必要があり、英文で書かれた内容を短時間で読み解く必要があります。課題文はそれほど難しい内容ではありませんので、治験分野の英文読解に慣れていれば正解を導くことができる設問です。

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治験実務英語検定について

治験実務英語検定は、医薬品開発に必要な英語スキルを測定する試験です。日本CRO協会が主催し、Basic、Advanced、Professionalの3コースを提供しています。

受験手順

治験実務英語検定の受験手順は、PC動作確認、インターネット申込、試験実施、結果発表、合格証入手の順で行います。

実施要項・申し込み

第9回 Basicコース試験 実施要綱 2024年10月7日(月)申込開始、2024年12月8日(日) 試験 第10回 Advancedコース試験 実施要綱 2024年11月18日(月)申込開始、2025年2月2日(日) […]

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