そういう中で、製薬企業の方と一緒に臨床試験を二人三脚で、時には厳しい指導も受けながら学び、スキルを身につけることをこの30年間やってきました。今では医薬品あるいは医療機器等を含めた開発にCROはなくてはならない存在として認知されてきています。これから真のパートナーとして、CROが開発をけん引していくような時代に向けて歩んでいく必要があると思っています。小川:自己紹介でも話した通り、私は2005年にIT業界からCRO業界に入ったのですが、以前のIT業界はアウトソーシングが当たり前の世界。CRO業界もアウトソーシングだから同じように仕事を任せてもらえるのだろうと思ったら、当初はまったく違いましたね。それこそ手取り足取り、依頼する側がCROの人たちに指導しながら業務を進めている状況。CROがクライアントから信頼されて仕事を任されるという状況ではありませんでした。それが変わり始めたのが2010年以降ぐらいからでしょうか。教育を中心に信頼性の確保に努めることで、その頃から信頼性うんぬんっていうのはあまり言われなくなったかなと思います。代わりに言われ始めたのが“もっと提案してほしい”、“プロアクティブ的な存在になってほしい”という要望です。提案しないと絶対に選定されないIT業界では当たり前のことでしたので、CROも普通の産業に近づいてきたのかなと日々感じているところです。小川:30年の間に切磋琢磨してきた結果として、CROはクライアントから一定レベル以上の信頼を2024年の現在では確保できているのではないかなと思います。では、今後のCROが目指すべき姿とはどういったものであるとお考えですか。安藤:医薬品の開発の世界の中で、今はスピードが非常に重要視されてきています。信頼性を確保した上でのスピードアップが非常に大きな目標というか、ニーズとしてあります。そこにどう対応するかが今後のCROに求められるだろうと思います。一方で、日本の治験が若干、停滞をしてきているという兆候が見られる中にあって、依頼者と共にプロジェクトの推進・改善といった取り組みを行ってきたCROの役割は大きいと思います。サービス業ではありますが、やはりフィールドを担っているプレーヤーとして、自分たちが開発をけん引していくんだという気持ちを持って活動することが、今後ますます重要になってくると思っています。藤枝:最近、治験の手法について非常に新しいことが起こっていて、例えばマスタープロトコル試験などいろいろな複雑なプロトコルであったり、あるいはデジタル化であったり、もちろんDCT(分散化臨床試験)もその一つですが、新薬開発を行っていくためにはそうしたことの知識や経験が必要で、メーカー1社ではちょっと難しくなってきています。その点、いろいろな経験をしているCROには、そうしたノウハウが自然とたまってくる。そのため、これから先の未来の新薬開発のキープレーヤーとして、その存在価値がさらに上がってくるのではないかと、そのように思っています。一方で、治験の対象は人であり、病気の患者さんですから、機械では難しいきめ細かな対応が必要不可欠。どうしても人手がかかってしまいます。しかし、新薬開発には波があり必要なマンパワーが大きく変動するため、メーカーではたくさんの人を抱えているわけにもいかないということもあります。人の調整弁というと言葉は悪いですが、今後は、その波がますます大きくなると思われるので、CROのマンパワーの面での貢献もさらに大きくなるのではないでしょうか。植松:今後、CROが目指すべきは、臨床試験のいろいろなオペレー6CROが今後目指すべき姿とは新薬開発を牽引するリーダー的存在へ特別座談会
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