Japan CRO Association Annual Report 2023
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Japan CRO Association Annual Report 2023日本CRO協会 会長 現在、臨床試験の手法はパラダイムシフトが起きており、GCP Renovationの大きな趣旨として、臨床試験の目的や状況に 応じて満たすべき基準が変わるため、その目的や状況に合わせて被験者保護とデータの信頼性を確保しながら柔軟に対応していくこととされています。このような時代の変化に伴い、臨床試験に係わる方々の役割も変化してゆき、CROには臨床試験のプロセスの専門家としての課題解決、提案が今後ますます求められることとなります。 今後は世界の潮流に遅れないように、またCRO協会としてもドラッグロスにならないよう検討するとともに、医療機関や製薬企業など各ステークホルダーを繋ぐ活動ができればと思っております。2023年度はリモートアクセスモニタリングやe-Clinicalの推進、コンプライアンス活動の充実、データインテグリティの啓発、RBM、QMS関連など国内の臨床開発の活性化の方策を検討して参ります。 日本CRO協会としては、行政、アカデミア、関連団体にご協力を得ながら業界活動をさらに進めて参りますので、今後とも、皆様の更なるご協力とご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。 なお、本誌では昨年に引き続き座談会記事を企画し、今回はCRO業界で働く環境が変わる中で、これからのCROにおける人材育成、キャリア形成などをテーマで掲載しましたので、ご一読いただければ幸いです。 日頃、皆様には日本CRO協会の活動に対しご協力、またご支援を賜り厚く御礼申し上げます。昨年発刊したAnnual Reportは本刊が第2号となりますが、このレポートにより、協会内外の皆様に我々の活動を知っていただくとともに、ご理解と益々のご支援をいただければ大変うれしく思います。 当協会は1994年に設立され、来年は30周年を迎えます。この30年は大きく分ければ、CROの存在価値を示す最初の10年、人材育成/品質向上の次の10年、そして臨床試験効率化対応の10年といえると思いますが、特に、最近の3年間は新型コロナウィルス感染症により仕事のリモート化が進み、皆様の働き方が大きく変わってきました。同時に、複雑化する医薬品・医療機器開発の信頼性確保や高騰する開発費抑制のため、臨床試験手法の効率化、QbDの考え方、QMS導入、DCT導入、医療DBの利用などが進んでいる一方、臨床試験そのものはマスタープロトコルなど難度が高く、また複雑な治験が多くなってきました。さらには、製薬企業は新薬開発のみならず、デジタル技術を活用したライフサイクルにおける予知、予防、診断、治療、予後、健康作りを含めたビジネスモデルに変化していくと考えられ、今後の臨床試験には様々なテクノロジーが出現してくると思います。その意味で、CROのビジネスは受託業務範囲そのものが多様化している中、協会にはシステムベンダーやデータベースの企業も賛助会員として増加し、今後の課題、臨床試験の推進について共同して取り組む組織となってきたことを心強く思っております。 協会はこの環境変化の中で、昨年度は、治験のみならず、製造販売後調査、臨床研究、医療機器・再生医療分野で種々の課題に取り組みました。特にデジタル化関連ではリモートアクセスモニタリングの推進のため、医療機関や他団体との意見交換や学会での発表を通じて、その理解、促進に取り組みました。また、データインテグリティ啓発活動は製薬協、SMO協会との3団体で初めて一緒になって活動を行っています。さらに、臨床試験に係わるその他のデジタル化やDCT関連、製造販売後のデータベース利用、RWDの申請利用の調査、e-Clinicalの推進策検討などにも取り組んでいます。QMS関連ではプロセス管理に関するモニタリングの研修、GDPR研修、そして第22回CRCと臨床試験のあり方を考える会議in新潟ではSMO協会と「2030年の臨床試験」をテーマに共催セミナーを開催いたしました。また、CROの立場ではなかなか直接的に患者・被験者の声を聞く機会が少ないことから、臨床試験に参加いただいている患者さんがどのような思いや期待を持っているのかをお話しいただき、私たちの仕事の意義を振りかえる研修会等、様々な活動を開催し成果を上げてきました。各委員会の担当の方々の活動に対し心より厚く御礼申し上げます。3植松 尚会長メッセージ

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